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『戦闘妖精・雪風〈改〉』神林長平 書評/ 人間とは何か?

『戦闘妖精雪風〈改〉』の書評
マンボ

凄まじい戦闘描写だな。この『戦闘妖精・雪風』は。

USA

というわけで今回はこの作品!

『戦闘妖精・雪風〈改〉』の概要

『戦闘妖精・雪風〈改〉』は神林長平先生原作のミリタリー×ハードSF小説です。

タイトルに〈改〉と付いているのは、加筆訂正と新解説・新装幀をしたためだそうです。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』のあらすじ

主人公である深井零少尉は、FAF(フェアリィ空軍)に属しており、
戦術戦闘電子偵察機〈雪風〉に乗って、正体不明の異星人ジャムとの戦闘に
明け暮れています。

「深井零と戦闘機〈雪風〉」
「死んでいく仲間との会話」
「正体不明の異星人ジャムとの接触」

深井零は〈雪風〉にだけ愛着を抱き、周りに対して非情な性格でした。
しかし、たくさんの経験から自分は人間であることを改めて感じ、変化していく
ことになります。

異星人ジャムの正体はなんなのか?

『戦闘妖精・雪風〈改〉』の登場人物

・深井 零:FAFに所属している日本人。階級は少尉だが、後に中尉へと上がる。
        非情で冷徹な性格だが、なぜかブッカー少佐と仲が良い。

・ジェイムズ・ブッカー:階級は少佐。特殊戦の出撃管理を担当している。

・リディア・クーリィ:階級は准将。特殊戦の副司令。

・リチャード・バーガディッシュ:FAFの少尉。技術開発センターの技師でもある。

・カル―・グノー:階級は大佐。技術開発センターの技師である。

・アンディー・ランダ―:軍事評論家兼作家。少し強引なところがある。

・トマホーク・ジョン:階級は大尉。電子工学者である。

・その他:天田守少尉、ヒュー・オンドネル大尉、リン・ジャクソン

『戦闘妖精・雪風〈改〉』は何を伝えたいのか

機械のディテールと流れるように描かれる戦闘シーンが魅力的な作品です。

本作品で、伝えたいことは以下の2点です。

・戦闘機のディテール
・言葉と意思疎通

マンボ

人間の感情描写があまり見られず、言葉に焦点が当てられていることも作品内の魅力ともいえます。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』に見られる戦闘機のディテール

本作品では、戦闘機の描写や戦闘シーンがたびたび出てきます。
例えば、以下のような感じです。

エンジン点火機構作動。イグニッション・イクサイタ・スパークプラグ、点火。エアスタート・ランプが点灯している。雪風、降下。左エンジンが息を吹き返した。タービン吸気温度が上昇する。回転が急上昇。点火捜査をやめる。零はサイドスティックを握りなおす。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』P30ℓ10~ℓ13

戦闘機にあまり詳しくない私は、ガジェット部分の描写に圧倒されてしまいました。

「これは技術的な知識が必要だ!」と痛感し、
ネットで画像を調べながらどういう描写なのか頭に思い浮かべながら楽しんで読みました。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』での言葉・意思疎通

『戦闘妖精・雪風〈改〉』は、緻密なガジェット部分だけではなく、
「言葉」「意思疎通」もテーマになっています。

神林長平が”言葉”や”機械”に強大な力を与えれば与えるほど、人間を非人間化しようとすればするほど、そこには、解体されて雲散霧消してしまうはずの”人間”がかえって鮮明にしぶとく立ち現れてくる。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』「ジャムはそこにいる SFレヴュアー 冬樹 蛉」
P403ℓ7~9

私自身が読んだ中で、神林長平の作品はこの一作品しか読んでいませんが、
SFレヴュアーの冬樹蛉の引用文にかいてあるとおりだと思います。

本作品で一部例外を除いては、人間の心情・感情表現があまり描かれていないことが
分かります。

人間ではない機械のような奴、安い感情表現を使うことすらできなくなった奴、と
言いたくなるはずです。

なのに、なぜこうも「人間」として見てしまうのか訳が分からない状態
になるかもしれません。

「人間」を言葉で説明するのは難しいと改めて考えさせる作品でもありました。

『戦闘妖精・雪風〈改〉』まとめ

感情表現・心情表現を減らし、人間とは何かを考えさせる作品でした。

現在、『戦闘妖精・雪風』シリーズは、4冊目まで出されているようです。
4冊目は、今年2022年に発売されたばかりだそうです。

本作品を見て、続編である『グッドラック 戦闘妖精・雪風』も近いうちに呼んでみようと思います。

ABOUT ME
枝林 志忠
20代後半のブロガーです。 学問、農業、投資、書評、ジャンル問わず書いていきます。 英会話の経験もあります。 趣味は読書(これまたジャンル問わずですが、特に妖怪ものとSFもの)と筋力トレーニングです。